横浜の家庭裁判所へ。件の遺書の検認(開封)手続き。海外在住の姉の欠席届けやなんやでバタバタしたが、結局それも形式的なもので「開封手続きしますからね」という告知をした、という事実があればよいらしい。なんだか取り越し苦労であった。
「あれ?でもアンタ、前に自分でそんなこと言ってたじゃん?」
と家人。あれ、そうだったかな?この頃、考え事が多くて情報が整理出来てないな。
約束の時間に家裁前で司法書士のY先生と落ち合い、407号室と書かれた会議室のような部屋の前でしばし待つ。
「じゃあ私はここで待ってますので...」
開封時には書士は立ち会えないのだそうだ。縦長のO字型のテーブルに書記官に通され、入室する。
まず書記官(この時点でこの人が何者か分からなかった)にどうぞ、と席を勧められて何となく書記官と隣り合った上座の席に座ろうとしたら、
「あ、そこは裁判官の席なので...」
と遮られる。
あ、この人は裁判官じゃないのか。
それにしてもやっぱり裁判官は上座に座るものなのね。間もなく裁判官が登場。Yシャツにネクタイ姿で割とラフ。書記官もそんな感じで、役所の係員みたいだ。二人ともにこやかで物腰柔らか。
「本日の事件を担当します...Hと申します」
なるほどここでは全ての案件を「事件」って言うのね。
遺書を発見した経緯を確認。
「では発見状況の確認ですが...、あなたは遺書の存在は知っていたが、具体的な保管場所は知らなかった、と。で後日遺品整理をしていたところ、お父様の書斎のキャビネットから発見した訳ですね」
事前に遺書の保管場所を知っていたりするとちょっとややこしい話になる、らしいので(すり替えとか改ざんのとかの可能性?)事前にY書士と口裏合わせていた発見状況がH裁判官への陳述書に書かれている。
「はい。その通りです(ホントはちょっと違うんだけど...w)」
まあこれも形式的なことなのだ。
「遺書をお預かりいたしますね。...それでは開封いたします...」
H裁判官にに遺書を手渡すと、封筒の尻を机の上でトントンと弾き、中の便せんを下端に寄せる。次に手に取った、よくある事務用のハサミで封の上端を切り始める。
遺書の内容は知っているし、今更どうと言う事もないはずなのだが、いざハサミが入る瞬間は一瞬息を呑んだ。儀式めいた段取りを取られると、やっぱりなんだか感慨深いものはある。
H裁判官が書面を読み上げる。やはり、相続内容は父の遺言ノートに書かれていた物と同じ。読み上げる内容を書記官が速記で?記録用紙に書き留めて行く。
「...内容については以上です。ではこの筆跡と印鑑、これは遺言者のものであると認められますか?」
筆跡と印鑑をまじまじと見つめる。まじまじと見なくても分かる。特徴のあるハネと払いの強い筆跡。なんでもメモを取る父、その字は家中で目にしていた。未だにとても生々しい。
「間違いないです。ああ、この印鑑も生前よく使っていました」
平成19年6月8日と封筒の裏側に日付もしたためてある。2年前...か。胸あたりが少しだけチリチリした。
内容と筆跡の確認をするとH裁判官は退室。書記官が丁寧に封筒と便せんのサイズを定規で測り(!)それも記録用紙に書き留めて行く。
その傍らで、入室を許されたY書士と今後の打ち合わせ。とりあえずこっちで銀行口座の解約をし、母の口座へ振り替える。その後、不動産の名義変更をまたY書士に依頼する。
書記官は台紙に遺書の封筒と便せんを器用にホッチキスで留め、横浜家庭裁判所の印鑑を押した。